ここは、ひとつの温泉街。下呂温泉「水明館」で迷子になるほど楽しい、大人の探検記

日本三名泉のひとつ、下呂温泉。その中心を流れる飛騨川のほとりに、まるで一つの街のように堂々と佇む宿があります。それが、天皇陛下も宿泊されたという、下呂温泉の迎賓館「水明館」です。4つの宿泊館、3つの大浴場、美術館に能舞台…。ここは、もはや単なる旅館ではありません。

この記事は、あなたが水明館という名の巨大な豪華客船に乗り込み、館内地図を片手に、まだ見ぬ宝物を探して冒険に出かける、そんな心躍る一日を追体験する物語です。さあ、迷子になることさえも楽しい、大人の探検へと出発しましょう。

【物語の始まり】豪華客船への乗船

JR下呂駅から徒歩3分。飛騨川沿いに堂々と佇む水明館の姿は、まさに豪華客船のよう。玄関をくぐると、広々としたロビーと、にこやかなスタッフの方々が出迎えてくれます。チェックインの際に手渡されるのが、詳細な館内マップ。これを見た瞬間、私は悟りました。「これは、ただ泊まる宿ではない。探検する場所なのだ」と。

【最初の探検】飛泉閣9階「展望大浴場」へ

今回の滞在は、最もポピュラーな「飛泉閣」。荷物を置いたら、浴衣に着替えて、早速最初の目的地である、同じ飛泉閣の9階にある「展望大浴場」へ向かいます。エレベーターの扉が開くと、ガラス張りの大きな窓の向こうに、下呂の温泉街と飛騨川の絶景が広がります。開放感あふれる湯船に身を委ね、眼下に広がる景色を眺めていると、旅の疲れがすっと溶けていくようです。

下呂温泉の湯は、アルカリ性単純温泉。とろりとした肌触りで、天然の石鹸のような効果があることから「美人の湯」として知られています。その名湯を、まずは絶景と共に堪能しました。

【美食の饗宴】口の中でとろける「飛騨牛」に舌鼓

夕食は、今回の旅の大きな目的の一つである「飛騨牛」を味わうため、個室の料亭へ。運ばれてきたのは、美しい霜降りの入ったA5等級の飛騨牛を使った懐石料理です。陶板焼きで、自分の好みの焼き加減でいただく飛騨牛は、口に入れた瞬間、文字通りとろけていきます。甘く、豊かな肉の旨味。これぞ、岐阜が誇る最高の美食です。

水明館には、この他にも本格的な中国料理や欧風料理のレストラン、そして賑やかなバイキングレストランもあり、滞在の目的や気分に合わせて食事を選べるのも、この宿ならではの魅力です。

【夜の探検】野天風呂と、館内に眠る芸術

夕食後、腹ごなしに再び館内探検へ。次に目指すは、臨川閣1階にある「野天風呂」。昼間の展望大浴場とは全く違う、野趣あふれる岩風呂です。ライトアップされた木々に囲まれ、夜空を見上げながら入る温泉は、また格別の趣があります。

そして、温泉から上がった後は、館内に点在する美術品を巡る「ナイトミュージアム」。ロビーに飾られた人間国宝の作品や、画廊、そして能舞台まで。まるで美術館の中を散策しているかのような、贅沢な時間を過ごすことができました。

【朝の探検】歴史が香る「下留の湯」と朝食

翌朝。最後に目指すは、最も歴史が古いという山水閣1階の「下留の湯」。総檜造りの湯船と、レトロな雰囲気が、まるでタイムスリップしたかのよう。3つの大浴場を制覇した達成感と共に、最後の名湯を楽しみました。

朝食は、飛騨川を望むレストランでの和洋バイキング。朴葉味噌や鮎の甘露煮といった、飛騨地方ならではの朝食メニューも並び、朝から心ゆくまで満喫できました。

どんな人におすすめ？

この宿の特性を分析し、最適な評価軸で客観的な評価をまとめました。

対象者	おすすめ度	主な理由・特徴
夫婦・カップル	⭐⭐⭐⭐⭐	多彩な施設と食事の選択肢が、どんな好みを持つ二人でも満足させます。記念日向けの高級プランも充実。
家族旅行	⭐⭐⭐⭐⭐	プール（夏季）や卓球、ゲームコーナーなど子供が喜ぶ施設が満載。バイキングも家族に大人気です。
三世代旅行	⭐⭐⭐⭐⭐	バリアフリー対応も進んでおり、お年寄りも安心。世代ごとに好みの食事や過ごし方を選べるのが強みです。

まとめ：宿そのものが、旅の目的になる

水明館での滞在は、宿を拠点にどこかへ出かける、という旅ではありませんでした。宿そのものが広大な観光地であり、一日中いても飽きることのない、最高の目的地でした。

「次の休みは、どこに行こうか？」と考えるのではなく、「次の休みは、水明館を探検しに行こう」。そんな旅の計画はいかがでしょうか。