夏目漱石も愛した、三百九十余年の物語。道後温泉「ふなや」で過ごす、文学の香る休日

日本最古の温泉として、三千年の歴史を刻む、愛媛・道後温泉。そのシンボルである道後温泉本館のすぐそばに、まるで時が止まったかのように、静かに賓客を迎え続ける宿があります。それが、江戸時代・寛永年間から続く、三百九十余年の歴史を誇る老舗旅館「ふなや」です。

この記事は、単なる宿泊施設の紹介ではありません。あなたが、文豪・夏目漱石が小説『坊っちゃん』で描いた世界に迷い込み、歴史の香りに包まれ、そして伊予の美食に舌鼓を打つまでの一日を綴った、文学的な「物語」です。

【物語の始まり】『坊っちゃん』の世界へ

松山空港からリムジンバスに揺られ、道後温泉駅へ。レトロな駅舎と、その前を走る「坊っちゃん列車」が、明治の時代へと誘います。湯けむり立ち上る温泉街を歩き、道後温泉本館の荘厳な姿に息をのむ。そのすぐ裏手に、三百九十余年の歴史を誇る「ふなや」は静かに佇んでいました。

一歩足を踏み入れると、華美ではありませんが、隅々まで磨き上げられた、品格のある空間が広がります。ロビーに飾られた、ゆかりの文人たちの書。この場所が、ただの宿ではない、文化的なサロンであったことを物語っています。

【最初の癒し】川のせせらぎと、美人の湯

客室は、美しい日本庭園に面した落ち着いた和室。窓を開けると、川のせせらぎが聞こえ、心がすっと静まります。浴衣に着替えたら、まずは宿自慢の温泉へ。大浴場の露天風呂は、まるで自然の渓流のような設え。木々に囲まれ、川の音を聞きながら、日本最古の名湯に身を委ねます。

道後温泉の湯は、アルカリ性単純温泉。刺激が少なく、とろりとした肌触りで、湯上りは肌がすべすべになることから「美人の湯」として知られています。この湯に、かつて夏目漱石も浸かったのでしょうか。そんな歴史ロマンに、心が満たされます。

【伊予の美食】瀬戸内の恵みを味わう、正統派会席

夕食は、瀬戸内の海の幸をふんだんに使った、正統派の会席料理。鯛やヒラメなど、新鮮なお造りの盛り合わせ、季節の野菜を使った焚き合わせ、そして愛媛のブランド牛「伊予牛」のステーキ。一品一品、丁寧に作られた料理からは、料理長の確かな腕と、おもてなしの心が伝わってきます。派手さはありませんが、しみじみと「美味しい」と感じる、本物の味がここにありました。

どんな人におすすめ？【旅っ温泉旅館 評価】

対象者	おすすめ度	主な理由・特徴
夫婦・カップル	⭐⭐⭐⭐⭐	歴史と文学の香りに包まれた、落ち着いた大人の時間を過ごせます。記念日旅行にも最適。
親孝行旅行	⭐⭐⭐⭐⭐	皇室も利用されたという格式、美味しい和食、そして最高の立地は、ご両親に必ず喜んでもらえます。
文学・歴史好き	⭐⭐⭐⭐⭐	夏目漱石や正岡子規の足跡を辿る旅の拠点として、これ以上の場所はありません。

まとめ：物語の中に、泊まる

道後温泉「ふなや」での滞在は、ただの宿泊ではありませんでした。それは、夏目漱石が、正岡子規が、そして多くの人々が紡いできた、三百九十余年の壮大な物語の中に、自分自身も一晩だけ、登場人物として加わるような、不思議で、そしてこの上なく贅沢な時間でした。

あなたも、この美しい物語のページを、めくってみませんか？